2歳までに抗菌剤(抗生物質)を内服した子どもは、5歳の時点でアレルギーの病気(ぜんそくやアトピー)を発症しやすくなる、との研究結果が、日本の小児医療機関のトップである国立成育医療研究センターから発表されました。この原因として、抗菌剤が腸内細菌のバランスを大きく乱すことが指摘されています。
近年の医学研究の進歩により、腸内細菌の乱れがいろいろな病気(アレルギーの他、肥満・発達障がい・癌など)に関与していることがわかってきました。もちろん、病気の発症には、腸内細菌以外の原因(遺伝や環境)もあるのですが、少なくともヒトの健康の維持には腸内細菌のバランスが重要であり、特に小さな子どもにとっては、腸内細菌を乱す抗菌剤の使用は必要最小限にすることが大切と考えられています。
小児抗菌薬適正使用の推進が、この4月から本格的に始まり、多くの医療機関でその取組みが進められています。そこで感じるのは、「抗菌剤は細菌感染には有効だがウイルス感染には無効である」という事実をご存じない方がまだまだ多くおられる、ということです。もっと広く世の中に理解が進む必要性を感じています。単純な発熱・咳・鼻水・嘔吐下痢の場合、そのほとんどの原因は、抗菌剤が無効なウイルス感染です。抗菌剤の処方は、必要な状況(溶連菌感染症、中等度以上の中耳炎、マイコプラズマ感染症の疑い、など)以外には処方しませんので、ご理解のほど、よろしくお願いします。
枚方市香里ケ丘の小児科 保坂小児クリニック