病院のお薬は一般的には病気の時に飲んだり注射したりするもので、病気から回復すれば「お薬で治った!」、という実感があります。一方ワクチン(予防接種)もお薬の一つなのですが、「健康な時にわざわざ病院に行かないと受けられない(逆に病気の時は原則受けたらダメ)」、「効いたという実感がない(本当はすごい効果があるのですが)」、さらには、「病気でもないのに痛い思いをしないといけない」、といった、ちょっと特殊なお薬です。そんなこともあって、一部の人々(一部のお医者さん含めて)は、「ワクチンは不要」「ワクチンは危険」さらには「ワクチンは製薬会社の陰謀」といった正しくない情報を流しています。そしてそんな情報をみてワクチンに対して誤解し不安になる方も少なからずおられます。
でも、「健康な人を病気から守り健康を維持する」のがワクチンの役割であるならば、健康な状態がそのまま維持されるのですから「効いたという実感がない」のは当然なのです。効果の証明は、ワクチンを受けた人と受けてない人で大規模な調査比較をすることにより初めて判定されるのであり、実際全てのワクチンがそのような調査で効果が証明されています。
また、そもそも、「絶対に大丈夫(=100%安全)な薬」というのは存在せず、皆さんが普段、病気のときにもらうお薬はどれも、何らかの副作用のリスクがありますし、それはワクチンも例外ではないです。でも、普段の食べ物や肌につける化粧品だって、100%安全なものはないし、もっといえば、おもちゃや乗り物を含めて地球上に存在するすべてのものが、100%安全性を証明されているものなんてないのです。お薬(ワクチン含む)は、そのメリット(効果)とデメリット(副作用)を比較し、はるかにメリットが大きいと証明され、人々の健康に有用と判断され、国に認可されて皆さんに処方されるのです。健康な人に注射する薬であるというワクチンの特性上、ごく一部で生じる副作用(副反応ともいいます)があると、ことさらそれを強調して「だからワクチンは危ない」という人が必ずいるのですが、その考え方は正しくないことを多くの方に是非理解していただきたいです。少なくとも、巷で派手に宣伝されている、高価な健康食品や健康器具などよりは、はるかにワクチンは安全かつ有用(さらにいえば安価)と考えています。
ワクチンは、例えていうと、バイクのヘルメットや車のシートベルト、のようなものになります。ヘルメットは、汗でムレたり、髪型が乱れたりするし、シートベルトは窮屈だったりします。でも、どちらも自分や家族の命を守るうえで、とても大切な役割を持っていますよね。かつて、ヘルメットやシートベルトが法制化された際は、多くの反対運動があったのですが、今や、どちらもそれを装着するのが当然で、ないと怖くて運転できない、と皆さん感じていると思います。ワクチンの役割は、これらにとても近いと考えています。
また、お薬の働きでいうと、病気を治す薬よりも、病気を未然に防ぐワクチンのような薬の方が、はるかにすごいと思いますし、ワクチンは医学の進歩が人類に貢献した最大のものの一つなのです。
最後に、医師でありジャーナリストでもある村中先生が、ワクチンの安全性に関して、とても分かりやすい記事を書いていますので、ご紹介します(リンクはこちら)。
枚方市香里ケ丘の小児科 保坂小児クリニック